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浦島太郎の元ネタ・起源とされる山幸彦を古事記の神話から解説!聖地やあらすじについても

2020年2月13日

御伽草子の「浦島太郎」は、実は日本最古の歴史書『古事記』に書かれている日本神話に登場する「山幸彦」が元ネタと言われています。

その「山幸彦」の神話を紹介しつつ、なぜ「浦島太郎」の元ネタと言われているのかを解説しています。

 

目次

御伽草子「浦島太郎」のストーリーのあらすじを簡潔におさらい

まずは御伽草子「浦島太郎」のあらすじを簡潔にまとめておさらいしておきましょう。

  • 浦島太郎という漁師がいじめられている亀を助け、そのお礼に龍宮城に連れて行ってもらった。
  • 龍宮城の美しい乙姫様と「時の部屋」で時を忘れて毎日楽しく過ごしていた。
  • 母に会いたくなった浦島太郎は、元の世界へ帰ろうとする。
  • 乙姫様は「これがあればまた龍宮城へ帰ってこられるけど、元の世界では絶対に開けてはなりません」と言いながら玉手箱を渡す。
  • 浦島太郎が元の世界へ戻ると、そこは何百年も経った世界だった。
  • 悲しくなった浦島太郎は玉手箱を開けてしまうと、けむりが出てきておじいさんになってしまった。

御伽草子「浦島太郎」を象徴するキーワードはいくつかありますが、ここでは「龍宮城」「美しい乙姫様」「時を忘れて楽しむ」「玉手箱」というところがポイントです。

 

 

浦島太郎の元ネタとされる山幸彦が登場する『古事記』の神話を解説!

それでは、御伽草子「浦島太郎」の元ネタとされる「山幸彦」が登場する『古事記』の日本神話を簡潔に紹介しながら、なぜ「浦島太郎」の元ネタとされているか解説していきましょう。

『古事記』の日本神話「海幸彦と山幸彦」のあらすじを簡潔に紹介

まずは『古事記』に書かれている「海幸彦と山幸彦」の神話のあらすじです。

  • 海の幸を獲るのが得意な兄の海幸彦と、山の幸を獲るのが得意な弟の山幸彦という兄弟がいた。
  • お互いの道具を交換してみたら全然うまくいかず、元に戻そうとしたが、山幸彦は海幸彦の釣り針を無くしてしまった。
  • 海幸彦が許してくれず困っていると、老人が「海の神様が助けてくれる」と言い、山幸彦を海の宮殿へと導いた。
  • 山幸彦が海の宮殿に着くと、海の神の娘で美しい豊玉姫と恋に落ち、結婚して3年間も時を忘れて楽しい日々を過ごした。
  • ふと無くした釣り針のことを思い出し、海の神に相談すると、魚を集めて釣り針を見つけてくれた。
  • 山幸彦が元の世界へ戻ろうとすると、海の神が不思議な力を持つ玉を授けてくれた。
  • 山幸彦は海幸彦に釣り針を返し、不思議な玉を使って自分を困らせる海幸彦をこらしめた。

山幸彦が浦島太郎の元ネタとされる理由を解説

上記の「海幸彦と山幸彦」の神話のあらすじからもわかるように、「海の宮殿」「美しい豊玉姫」「時を忘れて楽しむ」「不思議な力の玉」というキーワードが御伽草子「浦島太郎」とそっくりですよね。

これらのことから、「浦島太郎」の元ネタは『古事記』に書かれている「山幸彦」だと言われているのです。

ただ、この神話は主人公の山幸彦は、浦島太郎のように理不尽なバッドエンドを迎えることはなく、むしろ兄の海幸彦の方が理不尽な目にあっています。

ある意味、ちょっと理不尽な内容で腑に落ちない物語の結末は似ていると言えますね。

このちょっと理不尽な「海幸彦と山幸彦」の神話については、下記の記事で詳しく書いていますので、こちらも併せて読んでもらえると嬉しいです。

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浦島太郎の起源とされる『日本書紀』の「浦嶋子伝説」などについて解説!

「浦島太郎」は『古事記』の山幸彦の神話によるものと言われていますが、他にも「浦島太郎」の起源とされているものがありますので、簡単にご紹介します。

『日本書紀』に書かれている「浦嶋子(うらのしまこ)伝説」を簡単に解説

『日本書紀』においては、浦嶋子という若者が大亀を釣り上げると、たちまち美しい女性になったので、妻にして二人で海に入ると蓬莱山(ほうらいさん:仙人が住むという山)に着いた、という記述があります。

「浦島」という名前や「亀」というキーワードが重なりますね。ただ、この「浦嶋子伝説」では龍宮城ではなく蓬莱山となっているなど、一般的に知られている「浦島太郎」とはやや異なる部分もあります。

 

沖縄地方の「ニライカナイ」や東南アジア系の神話が起源とする説を紹介

沖縄地方には、海の彼方あるいは海底に「ニライカナイ」という天国のような理想郷があるという信仰があり、この「ニライカナイ」が「龍宮城」の起源となっているという説もあります。

また、海の彼方に理想郷があるという信仰は、東南アジアの南方系神話と深い結び付きがあり、これらが起源となっているという説もあります。

 

 

「浦島太郎」の作者は誰なのか?実はその後鶴になって飛んでいく結末だった!

室町時代『御伽草子』の「浦島太郎」の作者は不明:現在一般的な「浦島太郎」の作者は巌谷小波

「浦島太郎」の元ネタや起源とされているのは『古事記』や『日本書紀』など古代の神話や伝説だということはわかって頂けたと思います。

さて、『御伽草子』に収録されている「浦島太郎」の原作は室町時代に作られたとされており、作者は不明です。

ただ、現在私達が一般的に知っている物語は、明治時代の童話作家・巌谷小波(いわや さざなみ)が書いた『日本昔噺(にほんむかしばなし)』に収録されたものです。

そして、これを子供向けにアレンジしたものが明治時代から昭和初期の国定教科書に掲載され、広く一般的に知られるようになったのです。

 

原作『御伽草子』の「浦島太郎」は、その後に鶴になって飛んでいく物語

実は室町時代に作られた原作『御伽草子』の「浦島太郎」は、現在一般的に知られている物語とは全く異なる結末を迎えます。

原作では、おじいさんになった後、浦島太郎は鶴になって蓬莱山へ飛んでいき、時を同じくして龍宮城の乙姫様は亀に姿を変え蓬莱山へ向かい二人はそこで結ばれた、という結末なのです。

一説には、鶴と亀が縁起物とされるのはこの物語によるもの、とまで言われるほど正にハッピーエンドの物語ですよね。

ではなぜ現在一般的に知られている「浦島太郎」の結末は、おじいさんになってしまうというバッドエンドなのか?

それは、一説には浦島太郎が約束を破って玉手箱を開け、おじいさんになってしまったように、「約束を破ったら罰が下る」という教訓を教えるためだった、と言われています。

ただ、個人的な感想としては、「なんで良い行いをしたのに、最後は悲しい結末なんだろう」というモヤモヤの方が強く残ってしまうので、そのままハッピーエンドでもよかったのに、という思いです。

皆さんはどうお考えでしょうか?

ちなみに上記の「浦島太郎」の絵の作者は月岡芳年(つきおかよしとし)という人物で、「最後の浮世絵師」「血まみれ芳年」と呼ばれた人物です。

私のブログのトップページの神武天皇の絵も月岡芳年の作品で、大好きな浮世絵師です。

興味のあう方は下記の記事も参考にしてみて下さい。

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浦島太郎の元ネタ山幸彦が祀られる聖地を紹介

『古事記』の日本神話「海幸彦と山幸彦」の聖地とされているのは宮崎県の青島神社です。

地図で見てもわかるように、島にポツンとある神社で、「鬼の洗濯岩」と呼ばれる波状の岩に囲まれた神秘的な神社です。

  • 住所:〒889-2162 宮崎県宮崎市青島2丁目13-1
  • 御祭神:彦火火出見尊(ヒコホホデミノミコト:山幸彦のこと)・豊玉姫命
  • Webサイト

 

 

浦島太郎などのおとぎ話だけではない、日本神話の影響を受けた作品について解説!

このように、皆さんよくご存知の御伽草子「浦島太郎」は、『古事記』に書かれている日本神話「海幸彦と山幸彦」が元ネタだということはわかってもらえたと思います。

この他にも「桃太郎」は、同じく『古事記』に登場する伊邪那岐神(イザナギノカミ)と伊邪那美命(イザナミノカミ)の神話が元になっているとも言われています。

このことについては下記の記事でも触れていますので、気になった方はぜひ読んでみて下さい。

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また、人気沸騰中の漫画「鬼滅の刃」も、実は『古事記』の日本神話と深いつながりがあり、そのことについては当ブログでもいくつかご紹介しています。

その一例をご紹介しますので、「鬼滅の刃」が好きな方はぜひ読んで頂きたいです。

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今回ご紹介した「浦島太郎」や「桃太郎」「鬼滅の刃」など、様々な作品に影響を与えている『古事記』の日本神話は、大げさな言い方をすればあらゆる創作物の原点とも言えます。

ぜひこれを機に時間を忘れて『古事記』の世界にひたってみてはいかがでしょうか。

 

なお、おおまかな日本神話のあらすじをサッと知りたいという方は、下記の記事で簡潔にまとめていますので、ぜひこちらも参考にしてみて下さい。

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