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バキ道のモデル野見宿禰と当麻蹴速の伝説の戦いを日本書紀から解説!相撲の原型についても

2019年12月21日

長い歴史を誇る日本の国技・相撲は、野見宿禰(のみのすくね)と当麻蹴速(たいまのけはや)という人物の戦いが始まりだとされています。
その戦いについては日本最古の正史(国家の正式な歴史書)『日本書紀』に書かれています。

漫画「バキ道」に登場する二代目野見宿禰は、この『日本書紀』に登場する野見宿禰が元祖です。
この記事では、その『日本書紀』に記された初代野見宿禰について書いています。

 

「バキ道」の野見宿禰と当麻蹴速との伝説の戦いが記されている『日本書紀』について簡単に解説!

まずは野見宿禰と、当麻蹴速との伝説の戦い記された『日本書紀』について、簡単に解説していきます。

日本で最初の伝説の相撲取り・野見宿禰とは?

野見宿禰は、天皇の先祖の神様・天照大御神が生んだ天穂日命(あめのほひのみこ)の14世子孫とされていて、第11代垂仁天皇に仕えていたとされます。

もともとは出雲の国にいましたが、後述する当麻蹴速と戦う為に大和の地へ向かい、この戦いの後に垂仁天皇に仕えるようになりました。

野見宿禰はただの怪力の持ち主というだけではなく、当時の殉死の風習をやめる為に、代わりとなる埴輪(はにわ)を考案した人物でもあります。

なお、「宿禰(すくね)」というのは古代の称号のひとつで、同じく第11代垂仁天皇に仕えた、武内宿禰(たけうちすくね)という人物もいます。

 

野見宿禰の伝説が記された『日本書紀』とは?

『日本書紀』は西暦720年(養老4年)に、舎人親王らによって編纂された日本最古の正史(国家の正式な歴史書)です。

西暦681年に天武天皇の発案によって編纂が開始され、約40年かけて完成しました。

『日本書紀』の内容は、日本の成り立ちの神話から第41代持統天皇までの事蹟が全30巻にまとめられています。

同時代に編纂された『古事記』と併せて『記紀』と呼ばれますが、その違いについては下記の記事でまとめたので、こちらを参考にしてみて下さい。

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「バキ道」にも描かれた相撲の原型・野見宿禰と当麻蹴速の戦いを『日本書紀』の伝説から解説!

バキ道の第1話から描かれている野見宿禰と当麻蹴速。
漫画の中でも描かれている二人の対決は、現在にも続く相撲の原型となった戦いとされています。
この二人の戦いについて、『日本書紀』の伝説から解説していきます。

第11代垂仁天皇のもとに側近がやってきて、当麻蹴速という荒くれ者がいて「この世に俺に並ぶ強い者はいないだろう。強い者に会って、命をかけて力比べがしたいものだ!」と豪語していると伝えました。
その言葉を聞いた垂仁天皇は、「誰か当麻蹴速に並ぶ強い者を知らないか?」と、周囲の側近達に尋ねました。
すると側近の一人が「出雲の国に野見宿禰という者がいるので、連れてきて当麻蹴速と戦わせましょう」と言いました。

こうして、出雲の国から野見宿禰が到着し、いよいよ当麻蹴速との戦いが始まりました。
二人は向かい合って立ち、足を上げて蹴り合いになりました。
しかし、あっという間に野見宿禰が当麻蹴速のあばら骨を折り、腰を踏み折って殺してしまいました。

この戦いに勝った野見宿禰は、死んでしまった当麻蹴速の持っていた土地を与えられ、そのまま垂仁天皇に仕えることになったのです。
なお、この土地には「腰折田」という地名があり、それは当麻蹴速の腰が折れてしまったことから名付けられました。

この野見宿禰と当麻蹴速が日本で最初の相撲とされ、勝者の野見宿禰が最初の相撲取りと言われるようになったのです。

 

 

埴輪の提案者でもある野見宿禰と垂仁天皇の関係を紹介!

野見宿禰は日本で最初の相撲取りとされていますが、それだけではなく埴輪(はにわ)の風習をつくった人物でもあります。
そのことについても『日本書紀』に記されているので、簡単にご紹介します。

当時は皇族が亡くなると、仕えていた人や親しかった人を、生きたまま一緒に埋めて殉死させる風習があったそうです。
垂仁天皇の弟が亡くなった時も、その風習に従って臣下の人達を殉死させました。
しかし、そのことに心を痛めた垂仁天皇は、今後はこの殉死の風習をやめようと考えました。

時が経ち、皇后・日葉酢媛(ひばすひめ)が亡くなると、垂仁天皇は殉死に代わる方法を模索して悩んでいました。
その時、野見宿禰が出雲の国の土部(はにべ:焼き物を作る技術者)に人や馬の形の焼き物を作らせ「今後はこの土物(はに)を墓の周りに立てることにしましょう」と垂仁天皇に提案しました。
垂仁天皇はこの野見宿禰の提案を心から喜び、皇后・日葉酢媛の墓に初めて土物を立てたのです。

これが埴輪の風習の始まりとされ、その功績を称えて「土部臣(はじのおみ)」の姓を野見宿禰に与えました。

そしてこの事がもとになり、野見宿禰の子孫の土師氏(はじし)一族は、歴代の天皇の葬儀を司ることになったのです。

 

 

『古事記』では記されていない野見宿禰

ご紹介した日本の最初の相撲取り・野見宿禰の伝説は『日本書紀』には記されていますが、『古事記』には記されていません。
というのも、『古事記』は神話の部分に重点が置かれているので、天皇に関する内容はかなり限定されているからです。
『古事記』と『日本書紀』の違いについては、下記の記事でまとめていますので、併せて読んでみて下さい。

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今回ご紹介した野見宿禰以外にも、『古事記』では記されていない人物や伝説は多々あります。
2020年は『日本書紀』編纂1300年の年です。これをきっかけに『日本書紀』に触れてみてはいかがでしょうか。

 

なお、今回ご紹介した野見宿禰と当麻蹴速の戦いはマンガ遊訳 日本を読もう わかる日本書紀1 神々と英雄の時代に書かれています。

 

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