天皇記

仁徳天皇とはいつの時代のどんな人?実在しない説の逸話や伝説からわかりやすく解説!

2019年12月16日

令和元年7月に大阪府の「百舌鳥(もず)・古市古墳群」が世界遺産に登録されました。

中でも、「世界最大級の墳墓」とされる仁徳天皇陵(大仙陵古墳)は特に注目を集めていますね。

さて、その世界遺産にも登録された古墳に眠る「仁徳天皇」とはいつの時代のどんな人物なのか?その伝説や逸話をもとにわかりやすく解説します。

仁徳天皇とはどんな人で何をした人なのか?

まずは、そもそも仁徳天皇は実在しなかったのではないか?と言われる理由や、実在していたならばいつの時代の人物で、何をした人なのか?ということや、どんな家族構成の人物だったのかという基本的なことについて簡単に解説します。

 

仁徳天皇は実在しない人物説:西暦でいつ頃のどんな人物だったのか?

仁徳天皇は実在したとすれば、第16代の天皇として西暦300年代後半~400年代前半頃を生きた人物だとされています。

ところが、日本の正式な歴史書『日本書紀』では110歳で崩御したという記録がある一方、同じく歴史書の『古事記』では、丁卯年(西暦427年)に83歳で崩御したとなっています。

どちらの記録が正しいのか、また古代の人としては長寿であることなどから、実在の人物ではないのではないか?という声もあります。

ただ、当時は現在の1年間を2年と数えていたとする説もあり、実在した人物なのかどうかは定かではありません。

 

では、実在した人物として記される『古事記』や『日本書紀』では、どんな人で何をした人物だったのかというと、一言で言えば国民を思いやる政治をした人です。

後述する「民のかまど」の逸話でもあるように、租税と賦役(労働による課役)を免除するなど国民思いの天皇として聖帝(ひじりみかど)と呼ばれます。

また、都を「高津宮」という現在の大阪府に移し、その周辺の多くの地域で治水工事を行ったとされ、そのことも聖帝と呼ばれる由縁となっています。

一方、数多くの后を娶ったことで、下記の石之日売命(いわのひめのみこと)に嫉妬に悩まされた、という一面も持っています。

 

実在の人物として記される『古事記』での仁徳天皇の家系図

※漢字は『古事記』の表記


第15代応神(おうじん)天皇


中日売命(なかつひめのみこと)

皇后(妻)
石之日売命(いわのひめのみこと)

兄弟
兄:大山守命(おおやまもりのみこと)
弟:宇遅能和紀郎子(うじのわきいらつこ)

子供
第17代履中(りちゅう)天皇
第18代反正(はんぜい)天皇
第19代允恭(いんぎょう)天皇

 

 

仁徳天皇がどんな人物か「民のかまど」などの逸話や伝説をもとに解説!

先程ご紹介したように、第16代仁徳天皇は聖帝(ひじりみかど)と呼ばれました。

その言われとなる「民のかまど」の逸話や、兄弟や皇后など家族にまつわる逸話や伝説をご紹介します。

皇位継承をめぐる兄弟の逸話

父の第15代応神天皇は、仁徳天皇と兄の大山守命に、「年上の子と年下の子ではどちらが愛しいと思うか?」と尋ねました。
兄・大山守命は「年上の子が愛しいです」と答えたのに対し、仁徳天皇は「年上の子は大人になり心配ありませんが、年下の子はまだ大人になっておらず心配なので、年下の子が愛しいです」と答えました。
これを聞いた応神天皇は「私もそう思う」と、仁徳天皇に賛同しました。
これは、応神天皇がもともと一番年下の弟・宇遅能和紀郎子を次の天皇にしようと考えていて、それを二人の兄がどう思うかを確認する為の質問でした。
仁徳天皇は、父・応神天皇の気持ちを汲み取り「年下の子が愛しい」と答えたのです。

 

応神天皇が崩御した後、遺言に従って一番年下の弟・宇遅能和紀郎子が皇位継承することなりましたが、兄・大山守命はそれに背き、宇遅能和紀郎子を殺そうと企てます。
そのことを知った仁徳天皇は、兄・大山守命の企てを弟・宇遅能和紀郎子に伝えます。
すると、弟・宇遅能和紀郎子は船頭に変装して、兄・大山守命が川を渡ろうとした時に突き落として返り討ちにしました。

 

その後、弟・宇遅能和紀郎子は天皇になることを辞退し、兄である仁徳天皇に皇位継承権を譲ろうとします。
ところが、仁徳天皇も遠慮して辞退しますが、それでも弟・宇遅能和紀郎子は譲ろうとします。
こうしてお互い譲り合っていると、弟・宇遅能和紀郎子が早くに亡くなってしまったので、仁徳天皇が第16代天皇として即位することになったのです。

 

仁徳天皇の有名な逸話「民のかまど」

ある日、仁徳天皇は高い山に登って国土を見渡しました。
すると、民家から炊煙が立ち昇っていないことに気づき、これはきっと貧しい思いをしているからに違いないと考えました。
そこで、貧しい思いしている国民を思いやり、それから3年間は貢物や労働などの税を免除することにしました。

税を免除したことで、仁徳天皇の住む宮殿は雨漏りするなどボロボロになりましたが、税を再開して修理させるようなことはしませんでした。
こうして税を免除された国民は豊かに栄え、労働などの使役に苦しむことはなくなりました。

これが仁徳天皇が聖帝と呼ばれる由縁となった逸話「民のかまど」です。

 

仁徳天皇のプレイボーイ伝説?皇后・石之日売命の嫉妬

仁徳天皇には石之日売命という皇后がいましたが、黒日売(くろひめ)という美しい女性がいると聞き、側室として迎え入れようとしました。
ところが、石之日売命の嫉妬を恐れた黒日売は、船に乗って逃げ帰ってしまいます。

帰っていく黒日売を恋しく思った仁徳天皇はその思いを歌に詠むと、それを聞いた皇后・石之日売命は激怒して、船で帰ろうとする黒日売を降ろし陸路で帰らせました。
それでも黒日売のことが恋しい仁徳天皇は、皇后・石之日売命に「淡路島を見たいと思う」と言って欺き、黒日売のもとへと向かいました。

このように、聖帝と呼ばれる一方で、黒日売以外にも多くの女性を娶ったことが歴史書の『古事記』や『日本書紀』では記されています。

 

 

世界遺産の古墳郡に埋葬された仁徳天皇や他の天皇をもっと知りたい人へ

いかがでしたでしょうか。

世界遺産にも登録され、世界最大規模の墳墓・古墳に埋葬された第16代仁徳天皇について簡単にご紹介しました。

ところで、世界遺産にも登録されたように、大阪には仁徳天皇陵をはじめ巨大な古墳が数多くあります。

なぜこれほどまでに大阪に集中しているのか気になりませんか?

その理由について下記の記事で解説していますので、こちらも併せてよんでみて下さい。

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また、仁徳天皇陵をきっかけに「古墳に興味があるけど、関東に住んでいてそう簡単には行けないな」という方は、比較的身近な埼玉県にも実はすごい古墳群がありますので、下記の記事を参考に足を運んでみてはいかがでしょうか。

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