「因幡の白兎」の物語は、絵本などの記憶でなんとなく知っているけど、結局この物語は何が言いたいのかな?と思う人もいるでしょう。
この記事では、日本最古の歴史書『古事記』に書かれている「因幡の白兎」のあらすじをご紹介しつつ、この物語の教訓と意味を解説しています。
「因幡の白兎」のあらすじと神話の舞台となる場所を簡単に解説!
本題に入る前に「因幡の白兎」の舞台となった場所はどこなのか?ということと、あらすじを簡単にご紹介します。
「因幡の白兎」の舞台となる場所は鳥取県の白兎海岸の気多の岬(けたのみさき)
白兎がいたのは、因幡国(いなばのくに:現在の鳥取県)の白兎海岸にある気多の岬だとされています。
近くにはこの白兎をご祭神として祀った白兎神社があります。
ちなみに、よく間違える島根県出雲市の「稲佐の浜」は別の神話の舞台です。
あらすじのところでも触れますが、白兎は「淤岐ノ島(おきのしま)」から白兎海岸まで渡ってきたと言います。
これは、上の地図をスクロールして見ると北にある「淤岐嶋」のことだと言われていたり、「隠岐島」のことだとも言われています。
ただ、「隠岐島」から白兎海岸までは約100kmもあることから、すぐ近くの「淤岐嶋」とする方が現実的かもしれません。
「因幡の白兎」のあらすじを簡単に解説
はじめに、「因幡の白兎」は日本最古の歴史書である『古事記』に書かれた神話で、同時代に編纂された『日本書紀』には記述がありません。
それでは『古事記』に書かれている「因幡の白兎」の神話のあらすじを簡単に解説していきましょう。
なお、登場人物の「大国主命(オオクニヌシノミコト)」は、のちに付けられた名前で、この「因幡の白兎」の神話の段階では「大穴牟遅神(オオナムチノカミ)」という名前でした。
ここではわかりやすく「大国主命」としています。
大国主命(オオクニヌシノミコト)と泣いている因幡の白兎との出会い
大国主命にはたくさんの兄弟がいて、その多くの兄弟のことをまとめて八十神(やそがみ)と言います。
因幡の国に、とても美しい八上比売(ヤガミヒメ)という女性がいると聞きつけた八十神は、全員でヤガミヒメにプロポーズしようと因幡の国まで出かけることにしました。
その時、年下の大国主命は八十神からいじめられて、荷物持ちとして連れ出され因幡の国へと向かいます。
重い荷物を運んでいた大国主命は、八十神から遅れて海岸を歩いていると、傷ついて泣いている「因幡の白兎」に出会います。
因幡の白兎が泣いていた理由を大国主命に話す
大国主命が泣いている理由を因幡の白兎に尋ねると、それまでのいきさつを話しだしました。
私はもともと淤岐ノ島(おきのしま)に居て、こちらまで行こうと思ったものの、海を渡る術がありませんでした。
そこで、近くの海にいたワニ(サメの事だと思われる)に、「私とあなたの一族ではどちらが数が多いか、私が頭を踏んで数えてあげましょう。その為にも向こう岸まで一列に並んで下さい」と言ってワニを騙したのです。そして、並んだワニを踏んで渡り終えようとした時に「あなた達は私に騙されたんだよ」と言うと、一番端にいたワニに噛まれて毛をむしられてしまったのです。
因幡の白兎はさらに続けます。
こうして私が毛をむしられて泣いていると、先に通りかかった八十神に出会い「それなら海水を浴びて風に当たるといい」と言うので、その通りにやってみると更にひどくなってしまったのです。
と、泣いている理由を大国主命に教えました。
蒲(ガマ)の穂で因幡の白兎を助けた神の大国主命は、八上比売(ヤガミヒメ)と結ばれる
因幡の白兎の話を聞いてかわいそうに思った大国主命は、その傷の治療法を教えます。
その治療法とは、まず河口に行き淡水で体を洗った後、近くに生えている蒲(ガマ)の穂の花粉を取り、それを敷き詰めてその上を転がるという方法でした。
因幡の白兎は、大国主命に言われた通りの方法を試すと、みるみるうちに傷が回復していったのです。
傷が治った因幡の白兎は、そのお礼のかわりにとある予言をします。
その予言というのは、「八十神は誰も八上比売(ヤガミヒメ)と結婚はできず、あなたが八上比売と結婚するでしょう」というものでした。
すると、その予言のとおり八上比売は八十神を前にして「私はあなた達の妻になるつもりはありません。大国主命と結婚します」と言ったのです。
「因幡の白兎」は何が言いたいのか?神話から読み取れる教訓を簡単に解説!
「因幡の白兎」神話から読み取れる教訓1.因果応報
この「因幡の白兎」から読み取れる最大の教訓は「因果応報」これに尽きます。
良い行いをすれば良い結果が、悪い行いをすれば悪い結果がでるというものですね。
- 良い行い
・大国主命が因幡の白兎を助けたことで、八上比売という美しい女性と結婚できた。 - 悪い行い
・因幡の白兎がワニ(サメ)を騙したことで、噛まれて毛をむしられ傷ついた。
・八十神が大国主命や因幡の白兎にイジワルしたことで、八上比売にフラれてしまった。
絵本などで語られる教訓は、この「因果応報」を噛み砕いて子供に教えるのが一般的なようですね。
「因幡の白兎」神話から読み取れる教訓2.自惚れない、謙虚に
因幡の白兎はある意味、賢い兎だと言えます。
というのも、もともと居た場所から海を渡る為に、ワニ(サメ)をうまく説得して利用したわけですから、やり手のビジネスマンのように交渉力があるわけです。
ただ、自分の能力に自惚れてしまったが為に、それをひけらかしてしまい、それがアダとなってしまいました。
もし謙虚にしていれば、最後にワニ(サメ)に向かってあえて「あなた達は私に騙されたんだ」とは言わないでしょう。
うまくいっている時でも自惚れない、謙虚な姿勢でいれば「海を渡る」という目的も傷を負わずに果たせたはずです。
これは子供に限らず、むしろ大人に向けたメッセージなのかもしれませんね。
「因幡の白兎」の教訓を子供に教えるのにおすすめの絵本
「因幡の白兎」は、小さいお子さんに「嘘をつくのはよくないよ、それがいつか自分に返ってくるよ」という教訓を教えるのにピッタリの内容です。
この絵本の作者のいもとようこさんは、子供向けの絵本をたくさん書いていて、かわいらしくて見やすい絵が印象的です。
ぜひこの「因幡の白兎」をお子さんに読み聞かせてあげて下さい。
「因幡の白兎」の背景にある「意味」を簡単に解説!
「因幡の白兎」は上記の教訓を示すだけの神話ではなく、その背景には当時の情勢を表す「意味」があるという説があります。
この神話が書かれている『古事記』では、因幡の白兎が海を渡る為に「和邇(ワニ)」を並べたとしています。
古代の出雲地方ではサメのことを「和邇」と呼び、海神の使いとされてきました。
一方、兎は渡来神の象徴とされており、大陸からも近い出雲や因幡の国では、渡来人も数多くやって来ていたことを意味していると言われます。
このことから、出雲地方の現地民(和邇)と交易のあった渡来人(兎)との間で何らかの抗争があったのではないか、という説があります。
ですがこの説は根拠となる文献などはなく、『古事記』の神話に隠された意味を考えると、そのようにも解釈できるというものです。
このように『古事記』に書かれている神話には、物語以外にも読み取れる意味を含んでいるものが多々あります。
例えば『古事記』の神話では特に有名な「ヤマタノオロチ退治」の神話は、単なる怪物退治の物語ではなく、まったく別の意味があるとされています。
それについては下記の記事で詳しく書いています。
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このように「因幡の白兎」が書かれている『古事記』は、こうした教訓もさることながら隠れた意味を持っている神話がたくさんあります。
しかしそれは確たる裏付けがあるわけではなく、まるで都市伝説のようなものです。
この『古事記』の古代の都市伝説に興味をもった人は、ぜひ『古事記』の世界に飛び込んでみてはいかがでしょうか。
さて、この「因幡の白兎」の神話には実は続きがあります。
そしてその続きの内容というのが、予想もできない意外な内容なのです。
また、この「因幡の白兎」は、どうやら人気漫画の「鬼滅の刃」とも関係がありそうなのです。
これらのことについては下記の記事で続きを書いていますので、気になった人は併せてこちらも読んでみて下さい。
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なお、『古事記』に書かれている他の神話のあらすじを、ダイジェストで簡単に知りたいと思った人は下記の記事を参考にしてみて下さい。
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