出雲大社に祀られる神様の大国主命(オオクニヌシノミコト)は、日本最古の歴史書『古事記』の神話によれば、地上世界・葦原中国(あしはらなかつくに)の国造りを完成させた神様として描かれています。
しかし、大国主命は一人でどんどん突き進むようなタイプではなく、みんなの力を借りながら国造りを成し遂げました。
そんな大国主命の国造りを助けた神様の少彦名命(スクナヒコナノミコト)について解説しています。
目次
一寸法師のモデル?:大国主命の国造りを助けた少彦名命(スクナヒコナノミコト)を『古事記』の神話から解説!
大国主命の国造りを助けた少彦名命について、『古事記』の神話から解説していきましょう。
少彦名命は海からやってきた小人の神様
ある日、大国主命が出雲の美保崎(島根県松江市美保関町)にいた時に、海の彼方からガガイモの船に乗り、蛾の皮でできた服をまとった小人のような神様が現れました。
大国主命が名前を尋ねてもまったく答えず、周りにいた人たちに聞いても誰も知りませんでした。
するとヒキガエルが「物知りな案山子(カカシ)のクエビコが知っているでしょう」と言ったので、そのクエビコに尋ねると「この方は神産巣日神(カミムスヒノカミ)の子供の少彦名命ですよ」と答えました。
なお神産巣日神は、造化三神(ぞうかさんしん)と呼ばれる世界の始まりの頃に生まれた偉大な神様の1柱です。
大国主命が神産巣日神にお伺いを立てると、「それは私の手の指の間から生まれた子である。お前と兄弟となって、この地上世界を造りあげなさい」と助言をしました。
こうして大国主命と少彦名命で地上世界の葦原中国の国造りをすることにしたのです。
少彦名命は一寸法師のモデル?
日本のおとぎ話の「一寸法師」は、体は小さいながらも知恵を使って鬼退治をした物語で有名ですね。
その一寸法師は、お椀の船に乗って都へと旅をするシーンが特に印象的ですが、これは少彦名命の登場シーンと似ています。
小人ながら知恵があり、船に乗って旅をするという共通点から、一寸法師は少彦名命をモデルにしていると言われています。
小さなお子さんのいる方は、可愛らしい絵本作家のいもとようこさんの作品で読み聞かせてあげるといいかもしれませんね。
大国主命と少彦名命の道後温泉の伝説や薬・医療、酒造の神と言われる理由を解説!
『古事記』では書かれていませんが、少彦名命は日本三古湯のひとつである道後温泉に深い関係があります。
また、薬や医療、酒造の神とも言われており、これらの関係性について簡単に解説していきます。
伊予国風土記に書かれてる大国主命と少彦名命の道後温泉の伝説を解説
ある日、大国主命と少彦名命が伊予国(いよのくに:愛媛県)を旅していると、突然、少彦名命が病に苦しみだしました。
そこで、大国主命は少彦名命を手のひらに乗せ道後温泉の湯につからせると、たちまち回復していき石の上で踊るほどに元気になったという伝説があります。
この伝説で描かれている石は、今でも道後温泉の本館の北側に「玉の石」として残されています。
少彦名命が薬や医療、農業や酒造の神と言われる理由を解説
道後温泉の伝説にもあるように、少彦名命は温泉療法を広めたり、薬や医療を普及させていったとされてます。
また、大国主命と国造りをするなかで、農業指導や酒造りなど人々の普段の生活にも役立つ知恵を授けたとされています。
少彦名命の酒造りについては、第14代仲哀天皇の皇后・神功皇后が和歌の中で少彦名命の酒を称賛する場面もあるほどです。
少彦名命の謎の失踪:その後の大国主命の国造りの結末を解説!
少彦名命は小人のような神様でありながら、薬や医療のほか農業や酒造りの豊富な知恵をもち、大国主命の国造りをサポートしたブレーンのような存在です。
ところが、ある日突然に少彦名命は海の彼方の常世国(とこよのくに)へ帰ってしまいました。
なぜ少彦名命が突然常世国へ帰ってしまったのかは謎に包まれています。
頼りにしていたブレーンの少彦名命が去ってしまったことを大国主命はとても嘆き、「いったいこの先、私一人でどうやって国造りをすればいいものか」と思い悩んでしまいます。
すると海の向こうから光を照らしてやってくる神様が現れます。
この神様は「私をしっかりと祀るならば、一緒に国造りを手伝おう」と大国主命に言いました。
そして大国主命がその方法を尋ねると「大和の国の東の山に祀りなさい」と言い、大国主命はそのとおりにこの神様を祀ると、国造りはうまく運び葦原中国はとても賑わいのある立派な国になったのでした。
このように『古事記』では、大国主命が葦原中国を完成させたわけですが、大国主命はもともとは弱々しい神様で、ここに至るまでには様々な物語があります。
その代表的な神話をご紹介しますので、併せて読んでもらえると嬉しいです。
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このように様々な作品に影響を与えている『古事記』の神話に触れてみるのもいいかもしれませんよ。
ちなみに、この大国主命と少彦名命の神話も書かれている『古事記』のあらすじをダイジェストでまとめていますので、興味のある方はぜひ御覧ください。
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