「因幡の白兎」の神話はなんとなく知っているという人は多いでしょう。
ですが、一般的に知られているストーリーには続きがあり、実は因幡の白兎を助けた神様の大国主命(オオクニヌシノミコト)はとてもかわいそうな最後を迎えます。
この記事では、一般的に知られているストーリーのその後の結末について解説しています。
目次
『古事記』の因幡の白兎のストーリーを簡潔に解説!
まずは日本最古の歴史書『古事記』に書かれている、一般的に知られた「因幡の白兎」のストーリーを簡潔に解説していきましょう。
泣いている因幡の白兎と大国主命(オオクニヌシノミコト)の出会い
ある日、海岸で泣いている白兎を見つけた大国主命は、かわいそうに思ってなぜ泣いているのか尋ねました。
すると、ここに来る途中でワニ(サメ)を騙したら、噛まれて毛をむしられてしまったと言いました。
そこへ大国主命の兄弟の八十神(ヤソガミ)が来て、治療法として教わったことをしたら、余計にひどくなってしまい泣いていると言いました。
傷ついた因幡の白兎を助けた大国主命が美しい女性と結婚する
それを聞いた大国主命は、適切な治療法を白兎に教えると、たちまち傷が回復したのです。
そこで、白兎は助けてくれたお礼に「あなたは美しい八上比売(ヤガミヒメ)と結ばれます」と予言をすると、その予言のとおりに大国主命は八上比売と結婚することになったのです。
一般的に語られる「因幡の白兎」のストーリーはここでハッピーエンドを迎えます。
「良い行いをすれば良い結果が待っている」というメッセージを示した神話だと言えますね。
ここでは簡潔に紹介しましたが、詳しいストーリーを知りたいと思った人は、下記の記事を参考にしてみて下さい。
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因幡の白兎を助けた神・大国主命(オオクニヌシノミコト)とはどんな神様か解説!
さて、因幡の白兎を助けた神様の大国主命とはいったいどんな神様なのか、『古事記』の神話に基づいて家系図などから解説します。
『古事記』の神話で描かれる大国主命(オオクニヌシノミコト)の家系図
『古事記』で描かれる大国主命は、日本の最高神・天照大御神(アマテラスオオミカミ:以後アマテラス)の弟であり、ヤマタノオロチを退治したことでも有名な須佐之男命(スサノオノミコト:以後スサノオ)の6代後の子孫にあたる神様です。
「因幡の白兎」で結婚した八上比売以外にもスサノオの娘・須勢理毘売命(スセリビメノミコト)など、他にも多くの女性と結婚しており、実は恋多き神様でもあります。
また、息子の八重事代主神(ヤエコトシロヌシノカミ)と建御名方神(タケミナカタノカミ)は、後にアマテラスとの「国譲り」神話の中で登場します。
大国主命は出雲大社に祀られる神様
大国主命はのちに地上世界の国造りを完成させますが、その国を天上世界のアマテラスに譲ることになります。
そこで、大国主命が造った国を譲るかわりに、その見返りとして天高くそびえる社を建てることになりました。
こうして建てた社こそ出雲大社であり、この神話をもとに大国主命が祀られることになったのです。
大国主命のかわいそうな最後:その後のストーリーの結末を簡潔に解説!
さて、一般的にはハッピーエンドで語られる「因幡の白兎」ですが、『古事記』にはその後のストーリーが書かれていて、とてもハッピーエンドとは言えない実は怖い内容です。
それでは、その実は怖い「因幡の白兎」のその後のストーリーをご紹介しましょう。
その後、大国主命に嫉妬した八十神がひどい仕打ちをする
大国主命は因幡の白兎の予言とおり美しい八上比売と結婚しますが、実はその事がかえって災いを招くことになるのです。
大国主命の兄弟の八十神達は八上比売に惚れていて、誰もが結婚したいと思っていました。
ところが、よりによってイジメていた大国主命が八上比売と結婚してしまったのです。
そのことが気に入らない八十神は、激しい嫉妬のあまり、なんと大国主命を殺してしまおうと考えたのです。
伯耆国(ほうきのくに:現在の鳥取県)にの山に着いた時、大国主命を呼び出して「この山には赤いイノシシがいるそうだ。俺たちが山頂から追い落とすから、お前は下で待ち構えて捕まえろ!さもなくば殺すからな!」と脅しました。
八十神はイノシシに似た形の大きな岩を火で焼き、それを下で待ち構えている大国主命に向かって転がしました。
何も知らない大国主命は、転がってくる岩をイノシシだと思って受け止めようとしました。
気づいた時にはすでに遅し、真っ赤に焼けた岩に組み付いた瞬間に焼け焦げ、なんと大国主命は死んでしまったのです。
2度も死亡するかわいそうな大国主命の最後:ストーリーの結末はスサノオ編へ
こうして八十神の嫉妬により死んでしまった大国主命ですが、そのことを知った母神が嘆き悲しみ、天上にいる神産巣日神(カミムスヒノカミ)という偉大な神様に、なんとか大国主命を生き返らせてくれるようにお願いしました。
すると神産巣日神は、貝の化身の女神を遣わして大国主命を蘇らせてくれたのです。
ところが、殺したはずの大国主命が生きていることを知った八十神は、再び大国主命を殺そうとします。
大木に切り込みを入れて楔(くさび)を打ち込み、その切込みの間に大国主命を誘い入れ、その瞬間に楔を抜いて大国主命を挟んで殺してしまったのです。
再び死んでしまった大国主命を、やはり母神が蘇らせましたが、さすがにこれ以上は危ないと思い、紀国にいる大屋毘古神(オオヤビコノカミ)を頼って逃しました。
それでも八十神はしつこく追ってきたので、危険を感じた大屋毘古神は大国主命をその場から逃がすことにします。
そして「根堅州国(ねのかたすくに)にいるスサノオの元に行きなさい。きっとうまく取り計らってくれるはずだ」と言って、大国主命をスサノオの元へと逃したのです。
このように、因幡の白兎を助けたことでハッピーエンドどころか、2度も殺されてしまったかわいそうな大国主命。
最後は、先祖にあたるスサノオの元へと向かうという結末でこのストーリーは終わります。
このように、「因幡の白兎」は一般的に知られているストーリーとは全く異なる、実は怖い神話だったのです。
なお、大国主命の神話の「スサノオ編」は下記の記事にまとめていますので、続きがきになった人はぜひ読んでみて下さい。
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このように、一般的にはあまり知られていない『古事記』の日本神話は、実際に読んでみると意外過ぎる展開に驚くと思います。
さらに言うと、この「因幡の白兎」のストーリーは、どうやら人気漫画「鬼滅の刃」と深く関わっているようです。
そのことについては下記の記事でまとめていますので、併せて読んでみて下さい。
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これをきっかけに『古事記』の日本神話の世界に飛び込んでみてはいかがでしょうか。
ちなみに、おおまかなあらすじだけでも知りたいと思った人は、下記の記事で簡潔にダイジェストでまとめましたので、こちらを参考にしてみて下さい。
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