日本の歴史書『古事記』や『日本書紀』の神話に登場し、漫画やゲームのキャラクターのモデルにもなるイザナギとイザナミ。
そのイザナギ・イザナミは夫婦の神様で、日本の成り立ちに大きく関わる神様です。
ですが、この夫婦が最初に生んだ子供「ヒルコ」についての神話は、実はとても怖い内容の物語です。
この記事では、そんなイザナギ・イザナミの実は怖い「ヒルコ」の神話について解説していきます。
目次
イザナギ・イザナミとはどんな神様なのか神話や家系図から解説!
まずは、イザナギ・イザナミについて、どんな神様なのか簡単に解説していきます。
日本最古の歴史書『古事記』によれば、世界が混沌としていた時に、天之御中主神という性別のない独神(ひとりがみ)が誕生しました。
その後、続々と独神が誕生しますが、特に早い時期に誕生した神々を「別天神(ことあまつかみ)」と呼び、中でも特に尊い3柱を「造化三神(ぞうかさんしん)」と呼びます。
さらに2柱の独神が誕生したのち、男女の夫婦の神々が誕生しました。
その最後の夫婦の神がイザナギ(男神)・イザナミ(女神)で、この2柱の独神と5組の夫婦の神を「神代七代」と呼びます。
この時はまだ日本の国土も無い状態で、これまでに誕生した神々の総意によって、イザナギとイザナミが日本を創造することになったのです。
こうしてイザナギ・イザナミによる日本列島創造神話「国生み」へと続きます。
そしてその「国生み」神話こそが、実は怖い物語なんですね。
イザナギ・イザナミの最初の子供「ヒルコ」にまつわる実は怖い「国生み」神話を紹介!
ではイザナギ・イザナミの最初の子供「ヒルコ」にまつわる実は怖い「国生み」の神話を『古事記』から紹介していきます。
イザナギとイザナミの「国生み」の為のまぐわい
天上世界の神々の総意によって、日本を生み出すことを命じられたイザナギとイザナミは、天の浮橋(あめのうきはし)という所から、地上世界の海に向かって矛(ほこ:槍)を突き刺します。
そしてその矛を引き上げると、その矛先からしたたり落ちたしずくが固まって島となりました。
この島を淤能碁呂島(おのごろじま)と言い、ここに大きな柱のある神殿を建てて拠点とし、国となる島々を生むことにします。
神殿を建て一息ついたところで、イザナギは自分の下半身を見て不思議に思い、イザナミにむかって「あなたの体はどうなっていますか?」と尋ねます。
それに対してイザナミは「私の体はだいたい完成しているけど、一か所だけくぼんでいる所があります」と答えました。
するとイザナギは「私の体もだいたい完成しているけど、一か所だけ出っ張っています。私の出っ張っているもので、あなたのくぼんでいる所を塞いで国を生みませんか?」と問いかけました。
イザナミもそれに賛成したので、二柱は神殿に向かい国を生むことにします。
二柱は神殿に着いて柱の前に立つと、イザナギは柱を左から廻り、イザナミは柱を右から廻って、出会った所でイザナミから「あなたはなんていい男なんでしょう!」と声をかけました。
それに続いてイザナギも「あなたはなんていい女なんだ!」と応えました。
イザナギは「女性から声をかけたのはよくなかった」と言いながらも二柱は神殿に向かい、国を生む為にまぐわいました。
なお、このことを美斗能麻具波比(みとのまぐわい)と言います。
イザナギとイザナミの最初の子供「ヒルコ」は不具の子だった
イザナギとイザナミのまぐわいによって生まれた最初の子供は、手足の無い「ヒルコ(蛭子、蛭児)」でした。
現代で言えば不具の子で、親であるイザナギとイザナミは悲しみにくれました。
日本を創造する為に生んだ最初の子供「ヒルコ」に対して、イザナギとイザナミがとった行動は、葦(あし)で出来た船に乗せて島から流すことでした。
しかもこの「ヒルコ」を自分の子供としては数えないことにしてしまいます。
そして「ヒルコ」を流してしまった後、イザナギとイザナミはすぐに次の子供を生みますが、その子供も不完全な「淡島」で、こちらも子供としては扱いませんでした。
日本の生みの親とも言えるイザナギ・イザナミですが、最初に生まれた不具の子を流してしまうという、悲しくも怖い神話があったのです。
「国生み」失敗の原因は女から声をかけたのがよくなかった
国となる島を生む「国生み」が立て続けに失敗してしまったイザナギとイザナミは、天上世界・高天原(たかまがはら)の神々に相談しに行きました。
そして太占(ふとまに)という、鹿の肩の骨を焼いてそのヒビの入り方で吉凶を判断する占いで、女であるイザナミから声をかけたことが原因だと判明しました。
その占いの結果を受けて、イザナギとイザナミはさっそく神殿に向かいます。
そして今度はイザナギから「あなたはなんていい女なんだ!」と声をかけ、続いてイザナミが「あなたはなんていい男なんでしょう!」と言いました。
すると今度は、現在の淡路島を皮切りに、現在の四国や九州など次々と立派な島が8島誕生しました。
こうして先に誕生した8つの立派な島にちなみ、当時は日本のことを別名・大八島国(おおやしまのくに)と呼びました。
イザナギとイザナミその後も島を生み続け、これによって日本の国土を創造したのです。
不具の子「ヒルコ」は福の神の蛭子大神・恵比寿様となった伝説・逸話を解説!
不具の子「ヒルコ」が恵比寿様となった伝説・逸話
さて、『古事記』や『日本書紀』では、この「ヒルコ」についてはその後のことは描かれていません。
ところが、兵庫県西宮市の西宮神社には後日談が残されており、その言い伝えによると「ヒルコ」は西宮市に漂着したといわれています。
そして、その土地の人々から外地からの来訪者を意味する「夷(えびす)」の字を与えられ、「夷三郎」として大事に育てられたとされています。
その後「夷三郎」は「蛭子大神」として祀られるようになり、神々の世界へと帰還したと伝えられています。
日本の沿岸部には、海からやってくる漂着物は神聖なモノ・神様と考えるエビス信仰という風習がありました。
そして、海から漂着した言い伝えと合わさって、「ヒルコ」を福の神・恵比寿様と同一視するようになったのです。
イザナギ・イザナミから不遇の扱いを受けた「ヒルコ」ですが、こうして大切に語られてもいるのです。
「ヒルコ」を祀る神社 西宮神社(兵庫県西宮市)
西宮神社は 福の神として崇敬されている えびす様をおまつりする神社の総本社です。
住所・アクセス
住所
〒662-0974 兵庫県西宮市社家町1-17
アクセス
○阪神電車・本線 「西宮駅」下車 南口より徒歩5分
○JR神戸線 「さくら夙川駅」下車 徒歩10分
「ヒルコ」以外にもある本当は怖い日本の神話
この記事では、イザナギ・イザナミの最初の子供「ヒルコ」にまつわる、本当は怖い日本の神話をご紹介しました。
ここでご紹介した内容は下記の本をもとに書いており、こちらの本には『古事記』や『日本書紀』の神話をベースに、日本の風習や神社にまつわる怖い話も数多く掲載されています。
この記事を読んで面白いと思った人にはおすすめの本です。
また、日本の神話ではイザナギ・イザナミによる「国生み」が終わると、今度はそこに住む神々を産み出す「神産み」へと続きますが、実はここでも怖い内容の物語となっています。
この「神産み」の神話については下記の記事で解説していますので、興味を持った人は併せて読んでみて下さい。
-
古事記のイザナギ・イザナミのかわいそうな子供カグツチを解説!鬼滅の刃ヒノカミ神楽との関係も
日本最古の歴史書『古事記』の物語に登場するイザナギ(男神)とイザナミ(女神)は、日本の国土を創造し、そこに住む神様を産み出した夫婦の神様です。 次々と子供となる神様を産み、火の神「カグツチ」(漢字表記 ...
続きを見る