私達民間人には苗字があります。
ですが、実は天皇には苗字がありません。
天皇に苗字が無いことを知っていても、意外となぜ苗字がないのかは知らないのではないでしょうか?
この記事では、そんな謎にせまってみたいと思います。
天皇に苗字がない理由① 苗字を与える立場だったから
古代の大和朝廷で設けられた「氏姓制度」では、現在の苗字を表す「氏姓」は、身分を表す称号として用いられていました。
古代においては、天皇を中心とする豪族による連合組織のような国家でした。
その豪族の立場を位置づけ、統制をとるために採用されたのが「氏姓制度」でした。
「氏」とは「氏上」と呼ばれるリーダーを中心とした同じ祖先をもつ同族集団のことで、「蘇我氏」や「物部氏」「大伴氏」があげられます。
一方「性」とは「氏」に朝廷内での地位や家格を示すために付与された称号です。
「蘇我氏」などの地元豪族には「臣」を、「物部氏」や「大伴氏」など早くから大和朝廷に仕えていた豪族には「連」が与えられたとされます。
そして、この「氏」「性」(苗字)を与えていたのが天皇であり、こうした身分を超越した存在であった為、氏姓(苗字)を必要としなかったのです。
天皇に苗字がない理由② 王朝で区別する必要がないから
17世紀から約300年間続いたロシアのロマノフ朝や、ヨーロッパで絶大な勢力を誇ったハプスブルク家など、世界の王朝は家名があるのは当たり前です。
ではなぜヨーロッパや中国などでは王朝に家名があったのか?
それは、王朝交代を繰り返すヨーロッパや中国では、前王朝と区別する必要があったからです。
例えば古代の中国では、いわゆる「易姓革命」という思想に基づいて、唐王朝の「李氏」が隋王朝の「楊氏」を滅ぼすなど、王朝一族がそっくり入れ替わりっています。
しかし日本においては、王朝とは現在にまで続く天皇家だけです。日本の歴史において、王朝交代は一度も起こっていないのです。
つまり、世界の他の国のように、王朝を区別する必要がなかったので苗字は必要なかったのです。
易姓革命とは?
古代中国において、王朝の交代を正当化する理論です。
「性」が「易(か)」わることによって革命がおこるというものです。
新たな王朝が誕生するのは、徳を失った前王朝に代わって、徳を備えた一族が新たに王朝をつくることが必要だからという理論です。
簡単にいえば「前王朝が悪いから、善人である自分達が新しい王朝を立てたのだ」という建前ですね。
「○○宮」は苗字ではない
現在の皇族には「秋篠宮」「三笠宮」と一見苗字とも思える名称があります。
しかし、これは天皇から成人男性皇族に与えられる称号「宮号」であり、苗字ではありません。
なお、この「宮号」は親王個人の呼び名の為、その家族は含まれません。
ですから眞子様は「秋篠宮文仁親王殿下、第一女子の眞子様」と呼ぶのが適切なのです。