日本は初代神武天皇が即位した日をもって建国としています。
さて、その初代神武天皇にも当然ながら両親がいますが、父親である鵜葺草葺不合命(ウガヤフキアエズノミコト:以後ウガヤフキアエズ)についてはほとんど知られていないでしょう。
この記事では、そんなほとんど知られていない初代神武天皇の父親のウガヤフキアエズについて解説しています。
目次
「建国記念の日」は初代神武天皇が即位して建国したことを祝う日
日本は初代神武天皇が紀元前660年1月1日(令和2年:西暦2020年から2680年前)に、初めて天皇に即位したことをもって建国とされています。
日本の「建国記念の日」が2月11日なのは、当時の暦を現在の暦に換算したからです。
このことは日本最古の歴史書である「日本書紀」に記されており、初代神武天皇は日本の建国の父とも言えるでしょう。
日本の「建国記念の日」については下記の記事を参考にしてみて下さい
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なぜ日本は建国記念日でなく建国記念の日なのか?違いと理由やいつから制定されたかを解説!
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初代神武天皇の父・ウガヤフキアエズとはどんな人物か家系図から解説!
さて、日本建国の父・初代神武天皇にも当然ながら父親がいます。
その神武天皇の父親は鵜葺草葺不合命(ウガヤフキアエズノミコト:以後ウガヤフキアエズ)ですが、どういう人物だったのか簡単に解説していきます。
神武天皇の父親ウガヤフキアエズの家系図
- 父・・・火遠理命(ホオリノミコト)※通称:山幸彦
- 母・・・豊玉姫(トヨタマヒメ)※豊玉毘売とも表記
- 妻・・・玉依姫(タマヨリヒメ)※叔母でもある
- 先祖・・・天照大御神(アマテラスオオミカミ)※ウガヤフキアエズは天照大御神の玄孫(やしゃご)
- 子供・・・初代神武天皇など
ウガヤフキアエズは叔母にあたる玉依姫と結婚し、そうして生まれたのが初代神武天皇こと神倭伊波礼毘古命(カムヤマトイワレビコノミコト)です。
上記の家系図を見てもらうとわかりますが、ウガヤフキアエズは天照大御神の玄孫(孫の孫)で、山の神の血筋と海の神の血筋を引いたサラブレッドの人物です。
ちなみに、ウガヤフキアエズの父である火遠理命と、祖父である邇邇芸命(ニニギノミコト)については下記の記事で紹介していますので、いったいどんな血筋なのか気になった人はぜひ読んでみて下さい。
ただ、あまりいい印象は持てないと思います。。。(笑)
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ウガヤフキアエズの名前の由来と意味を『古事記』の神話のエピソードから解説
さて、ウガヤフキアエズという名前はかなり独特ですよね。
実はこの名前は、『古事記』に書かれている神話のウガヤフキアエズが誕生する時のエピソードが元になっています。
それではその独特な名前の由来となる神話のエピソードをご紹介しましょう。
ウガヤフキアエズの父である火遠理命(以後は山幸彦)は、海の神の娘・豊玉姫と結婚し子供ができました。
その子供を生むにあたって、海辺に鵜(う)の羽を葦(あし)に見立てて産屋を作ることにしますが、その産屋の屋根が葺き終わる前に生まれそうになります。
まさに出産直前になって、豊玉姫は「子供を生む時は、海の世界にいる時の元の姿になってしまうので、絶対に見ないで下さい」と釘を刺して山幸彦に言いました。
ところが、見ないと約束したにも関わらず、山幸彦は豊玉姫が出産しているところをのぞき見してしまいます。
すると、なんとその産屋にいたのは美しい女性ではなく、巨大なワニ(サメのことだと思われる)の姿をした豊玉姫でした。
驚いた山幸彦は、思わずその場から逃げ出すと、豊玉姫ものぞかれていたことに気づきショックを受けてしまいます。
それでも無事に出産出来ましたが、結局産屋の屋根は葺き終わることはありませんでした。
このように、産屋の鵜の屋根が葺き合わないうちに生まれた子なので、鵜葺草葺不合命(ウガヤフキアエズノミコト)と名付けられたのです。
なお、ウガヤフキアエズを生んだ後、豊玉姫はのぞかれた恥ずかしさから、元の海の世界へ帰ってしまいます。
ただ、子供のことが気になるので、妹の玉依姫を遣わしてウガヤフキアエズを育ててもらうことにしたのです。
そして、成人したウガヤフキアエズは、この育ての叔母である玉依姫を妻として迎え、やがて二人の間に生まれた人物こそ初代神武天皇なのです。
「記紀」では書かれていない謎:ウガヤフキアエズ王朝が大分にあったとする説を紹介
「記紀」ではほとんど書かれていないウガヤフキアエズの謎
さて、日本の古代についての公式な歴史書は「記紀」という呼び名で知られる「古事記」と「日本書紀」です。
ところがこの「記紀」では、初代神武天皇の父であるウガヤフキアエズについては、名前の由来・意味であるエピソードと、叔母の玉依姫と結婚して初代神武天皇を生んだことが簡単に書かれているだけです。
ウガヤフキアエズが実際にはどんな人物だったのか、その物語やエピソードはまったく書かれておらず謎に包まれた人物です。
実は大分にウガヤフキアエズ王朝という王朝があったとする説
初代神武天皇の父親であるにも関わらず、なぜ「記紀」にはほとんどウガヤフキアエズの記述がないのか?
この謎については「ウエツフミ」という文献などから、実は古代において大分県にウガヤフキアエズ王朝という王朝があり、「記紀」との整合性がとれないことなどから詳細は省かれたとする説があります。
ただ、この「ウエツフミ」と呼ばれる文献は史料価値が認められておらず、そこに書かれているウガヤフキアエズ王朝というのは、偽作された架空の存在という位置づけです。
しかしながら、かつては出雲王朝も架空の存在とされていましたが、荒神谷遺跡の大量の銅剣の発掘により、一変して現在では出雲王朝は実在したものとされています。
今後、発掘調査などが進めば、もしかしたらウガヤフキアエズ王朝は実在したものとされるかもしれませんね。