『千と千尋の神隠し』で千尋は無事に両親を人間の姿に戻すことに成功し、元の世界へと帰ることができるようになりました。
そして途中までハクに見送られて帰ろうとすると、ハクから「決して振り返ってはいけない」と念を押されましたよね。
ではなぜ振り返ってはいけないのか?多くの人が疑問に思ったのではないでしょうか。
そこで、この記事では最後に振り返ってはいけないのはなぜなのか?その理由について探ってみました。
目次
『千と千尋の神隠し』で最後に振り向いてはいけない理由を考察
それではさっそく最後に振り向いてはいけない理由について考察していきます。
前を向いて生きて欲しいというメッセージ
千尋は別世界に潜り込んでからというもの、油屋で働いて河の神様やカオナシを助けたり、何よりハクの為に一生懸命になって過ごしました。
この経験が千尋を成長させ、結果的に元の世界へ帰ることができたのです。
別世界に来る前の千尋はどことなく無気力な感じで、両親ともあまり仲がいいとは言えませんでしたよね。
その時の千尋に比べたら、ずいぶんと大きく成長したように思えます。
しかし、この別世界での出来事はあくまでもかりそめのもので、本来生きていくべき世界は他にあります。
自分が成長できた体験は掛け替えのない財産ですが、だからといっていつまでもそれにしがみついていては更なる成長は望めません。
ハクは千尋に元の世界でもっと成長して幸せになってほしいと思っていたはずです。
だからこそ、いつまでもこの世界の体験に浸ってばかりいて欲しくないと願い、千尋に振り返ってはいけないと言ったのではないでしょうか。
ハクの言葉は、千尋に過去にとらわれず前を向いて幸せに生きて欲しい、という願いの表れだったのだと思います。
日本の神話を元にしているから
『千と千尋の神隠し』はやおよろずの神様達が登場しますし、背景にも鳥居やほこらが描かれるなど、日本の神話に通じるところが見受けられますね。
さて、日本の神話にはこのシーンと似た物語があります。
それは日本の国土を創造したイザナギ(夫)とイザナミ(妻)という夫婦の神様の物語で、どんな内容か簡単にご紹介します。
イザナミが子供の神様を生んだ時に死んでしまい黄泉の国に行ってしまうと、イザナギは寂しさのあまりイザナミに会う為に黄泉の国へ向かいました。
しかし、イザナギが黄泉の国の門の前までくると、イザナミは「すぐには会えないので待っていて下さい。そして決して中をのぞいてはいけません」とイザナギに忠告をしますが、イザナギはなかなか戻ってこないことにしびれを切らして中をのぞいてしまうのです。
すると、そこにいたのは、なんとウジがわいて腐りはてた姿のイザナミでした。
イザナギは驚きのあまり逃げ出すと、イザナミは恥ずかしい姿を見られたことに激怒してイザナギを追いかけたのです。
イザナギはなんとか逃げ切ったものの、このことでイザナミとは永遠の別れを告げることになったのです。
この物語のように、「見てはいけない・振り返ってはいけない」というのは日本の神話だけでなく、「浦島太郎」や「鶴の恩返し」などのおとぎ話にも使われますし、世界の様々な神話にも描かれまています。
そして、その大半が約束を破って見たり振り返ったりしてしまい、その後にとても恐ろしい出来事が待ち受けている場合が多いのです。
『千と千尋の神隠し』も、この神話の「見てはいけない・振り返ってはいけない」という物語の影響を受けているのではないでしょうか。
ただ、神話とは違い、千尋は最後まで振り返らなかった為、恐ろしい結末にはならずに済みましたね。
もし振り返ったらどうなっていたか
ところで、もし千尋がハクとの約束を破って振り返っていたらどうなっていたのでしょうね?
今度はそのことについて考えてみましょう。
元の世界に戻れなくなってしまう
ハクは千尋といつかどこかでまた会えることを望んでいると言っていましたよね。
それはこの異世界の中で会うということではなく、あくまでも二人が本来いるべき世界で会いたいということだと思います。
つまり、ハクは千尋がこの異世界に戻ってきてしまうことは望んでいないわけです。
そう思っているハクが念を押して「振り向いてはいけない」と言っているのですから、もし振り向いてしまったらこの異世界に戻ってきてしまうことを知っていたに違いありません。
やはり、もし最後に千尋が振り返っていたら、きっと異世界に戻され、本来いるべき元の世界には帰れなくなったのではないでしょうか。
ハクがその後恐ろしい目にあってしまう
前述したように『千と千尋の神隠し』は日本の神話の影響を受けており、その神話で「見たり・振り返ったり」すると恐ろしい結末が待っています。
それを踏まえると、ハクは湯婆婆から「八つ裂きにされてもいいのかい?」と脅されていましたから、もし千尋が振り返っていたらハクが八つ裂きにされてしまったのかもしれません。
ただ、ハクは湯婆場に脅された時も返事はしていませんし、毅然とした態度をとっていましたから、八つ裂きにされたとは考えにくいですけどね。
まとめ
- 『千と千尋の神隠し』でハクが千尋に振り向いてはいけないと言ったのは「前を向いて生きてほしい」という願いが込められているから。
- 振り向いてはいけないというシーンは日本神話のイザナギ・イザナミの物語にいている
- もし千尋が振り返っていたら、千尋は元の世界に戻れなくなってしまう。
- 神話に照らし合わせると、振り返っていたらハクは八つ裂きにされて恐ろしい目にあっていたかもしれない。
当ブログでは『千と千尋の神隠し』にまつわる記事をいくつか掲載しています。
興味のある方はこちらの記事もぜひ参考にしてみて下さい。
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