日本最古の歴史書『古事記』の物語に登場するイザナギ(男神)とイザナミ(女神)は、日本の国土を創造し、そこに住む神様を産み出した夫婦の神様です。
次々と子供となる神様を産み、火の神「カグツチ」(漢字表記:火之迦具土神)もこの夫婦の間に産まれました。
しかしこの「カグツチ」は、『古事記』の物語中ではかわいそうな結末を迎えることになります。
この記事では、火の神「カグツチ」の、かわいそうな『古事記』の物語の解説と、「鬼滅の刃」などの漫画と「カグツチ」の関係について解説していきます。
目次
イザナギ・イザナミのかわいそうな子供「カグツチ」を『古事記』の「神産み」物語から解説!
「カグツチ」は、『古事記』に記されているイザナギ・イザナミが神様を産み出す「神産み」物語で誕生します。
この「神産み」物語から簡単に解説していきます。
イザナギ・イザナミが子供を産む『古事記』の「神産み」物語を紹介
イザナギとイザナミは、天上世界から地上に降り立ち、日本の国土となる島を生み出します。
そして一通り日本の国土を生み終えると、今度はそこに住む神様を産むことにしました。
まず住居に関する神様を産み、海や河など水に関わる神様、風・木・山・野など大地に関わる神様など、17柱の神様を産み出します。
さらに、イザナギ・イザナミが産んだ神様どうしで神様を産み、いわばイザナギ・イザナミの孫にあたる神様が16柱誕生しました。
火の神「カグツチ」は、イザナギとイザナミが産んだ17柱の最後の神様です。
火の神「カグツチ」が産まれた時のかわいそうな結末を紹介
イザナミが火の神「カグツチ」を産む時、その「カグツチ」から放たれる火によって、陰部に深刻なヤケドを負ってしまいます。
ヤケドがもとで、イザナミは嘔吐したり糞尿をたれ流すほどの瀕死の状態になりますが、その嘔吐物や糞尿からも神様が誕生し、神産みは続きました。
しかし、夫・イザナギの必死の看病もむなしく、ついにイザナミは死んでしまいます。
愛する妻を失ったイザナギは泣き崩れ、悲しみに打ちひしがれてしまします。
そして、イザナミを死に追いやってしまった「カグツチ」に対して、激しい憎悪を抱くようになったのです。
イザナギは、持っていた十拳剣(とつかのつるぎ)を手に取ると、なんと産まれたばかりの自分の子「カグツチ」の首にその刃を振り下ろしたのです。
斬られた首からは炎がほとばしり、激しい血しぶきをあげながら「カグツチ」は無残な姿で死んでしまいました。
「カグツチ」は、イザナミにヤケドを負わせ死にいたらしめたことで、実の父であるイザナギに、産まれて間もないのに無残にも斬り殺されてしまったのです。
この「カグツチ」が生まれたイザナギとイザナミの神話について、面白い動画があるのでご紹介します。
火の神「カグツチ」と剣の関係:竈神(かまど神)とされることについて解説!
父であるイザナギに首を斬られてしまった「カグツチ」は、単にかわいそうな神様ではありません。
実は剣・刀・刃などに関係する神様でもあり、竈神(かまどがみ)としても重要な神様です。
そのことについて解説していきましょう。
「カグツチ」と剣との関連性を解説
イザナギに斬られた「カグツチ」の首からは、おびただしいほどの血が飛び散ります。
そしてその飛び散った血や、その血がついた岩から剣や岩の神々が産まれました。
この「カグツチ」の血から産まれた神々のなかでも、タケミカヅチという神は剣の神様、雷の神様として『古事記』では重要な役割をはたします。
その代表的なものが、出雲大社の神様・大国主命(オオクニヌシノミコト)とアマテラスとの「国譲り」物語での活躍や、初代・神武天皇が窮地に陥った時にアマテラスの依頼により、神武天皇へ剣を授けた物語での活躍です。
またタケミカヅチを祀る鹿島神宮には、国宝であり日本最古最大の直刀が収められており、タケミカヅチが剣の神様といわれる由縁でもあります。
これらのことからも、まさに剣には「カグツチ」の血が宿っていると言えるでしょう。
ちなみにオオクニヌシとアマテラスの神話「国譲り」でも「鬼滅の刃」と関係があります。
それについては下記の記事で解説していますので、こちらもぜひ読んでみて下さい。
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竈神とは?「カグツチ」との関連性を解説
火は人間の生活に欠かせないものであると同時に、ひとたび火事が起こればすべてを焼き払う恐ろしいものです。
こうした創造と破壊の二面性を持った火を、古代の人々は神の力として崇めました。
一般家庭の竈(かまど:台所)は特に火を使う場所なので、火に対する畏怖の気持ちから「竈神(かまどがみ)」を祀るようになったといいます。
そして「カグツチ」は、アキツヒコ・アキツヒメに並んで「竈三神(かまどさんしん)」に数えられています。
火の神「カグツチ」は竈神としても重要な神様なのですね。
「鬼滅の刃」ヒノカミ神楽と火の神「カグツチ」について解説!禰豆子はアマテラス?ナルトなど他の漫画についても
「鬼滅の刃」と『古事記』に登場する「カグツチ」の関係について解説!
さて、ご紹介した『古事記』に登場する火の神「カグツチ」は、人気漫画「鬼滅の刃」と密接な関わりがあります。
それもそのはず、単行本1巻の作者のコラム「大正コソコソ噂話」で、作品のタイトルの候補に「鬼狩りカグツチ」「炭のカグツチ」という名前があったのです。
つまり、「鬼滅の刃」は火の神「カグツチ」をヒントに生まれた作品だと言えます。
読んでいる人なら「火の神」「剣(刃)」「竈」という言葉にピンとくるはずです。
「鬼滅の刃」ヒノカミ神楽と『古事記』の関係について考察!禰豆子は天照大御神(アマテラスオオミカミ)?
さて、「鬼滅の刃」でたびたび登場するキーワード「ヒノカミ神楽」は、「火の神神楽」とも「日の神神楽」とも捉えることができます。
ここで紹介したように、『古事記』では「火の神」は「カグツチ」で、「日の神」は「アマテラス」という女神です。
どちらもイザナギから生まれた神で、言わば兄妹とも言える関係性です。
原作では、鬼は太陽の光を浴びると死んでしまいますが、主人公・竈 炭治郎(かまど たんじろう)の妹・禰豆子(ねずこ)は、鬼になっても太陽の光で死なない唯一の存在です。
言わば、太陽の光を克服した存在であり、太陽を司る「日の神様・アマテラス」の存在に重ね合わせることができますよね。
つまり、主人公であり兄の炭治郎を「火の神・カグツチ」、妹の禰豆子を「日の神・アマテラス」として捉えることができるわけです。
もしかすると、最大の敵・鬼舞辻無惨を倒す為には、「火の神」と「日の神」、つまり炭治郎と禰豆子が二人で「ヒノカミ神楽」を使わなければいけない、という展開もあるかもしれませんね。
これはあくまでも個人の考察ですが、『古事記』を知っていると今後の展開を考える幅が広がり、より一層楽しめると思います。
「NARUTO(ナルト)」や「るろうに剣心」にも登場する「カグツチ」
また、漫画「NARUTO(ナルト)」に登場するサスケの使う技の名前として「カグツチ」は登場しますし、「るろうに剣心」の敵キャラ・志々雄真の技にも「カグツチ」の名前は使われています。
このように、多くの漫画で火の神「カグツチ」の名前は使われており、『古事記』の物語が少なからず作品に影響しているのではないでしょうか。
いかがでしょう?『古事記』に興味を持って頂けたでしょうか?
これをきっかけに『古事記』の物語を知りたいと思った人は、ぜひ読んでみて下さい。
きっと漫画の楽しみ方の幅が広がりますよ。
また、「カグツチ」の親であるイザナギ・イザナミについてもっと知りたいと思った人は、下記の記事で『古事記』のイザナギ・イザナミにまつわる別の物語を解説していますので、併せて読んでもらえると嬉しいです。
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当ブログではこうした『鬼滅の刃』と日本神話の関係についての記事を掲載しています。
あまり知られていない日本神話と照らし合わせると、一味違った楽しみ方ができると思うので、ぜひこちらも読んでみて下さい。
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