『千と千尋の神隠し』に登場するカオナシは真っ黒な体にお面をかぶっていて、しかも「油屋」の従業員のカエルを飲み込んでしまうなど、とても不気味なキャラクターですよね。
さて、多くのジブリ作品は明確な答えは示さず、観た人がどう感じるかという内容のものが多く、『千と千尋の神隠し』についても捉え方は様々あると思います。
中でもこの不気味なカオナシは、作品の中でどんな意味をもち、その正体は一体何なのかと考える人も多いでしょう。
そこで、この記事では多くの謎に包まれたカオナシの正体と、カオナシが存在する意味について考察してみました。
『千と千尋の神隠し』をより楽しむために、様々な角度から観る参考にしてもらえると嬉しいです。
目次
カオナシの正体とは?存在する意味について考察
さっそくカオナシの正体とは一体何なのか?そして物語に登場する意味について考察してみます。
カオナシの正体は「金をむさぼる欲望の現れ」
カオナシはその名の通り、お面をかぶっていて本当の素顔はわかりませんよね。
登場した最初のうちは「あ・・・」とか声というより音を発するだけで一体何を考えているのかわかりません。
ところが、腐れ神だと思って皆が敬遠していたのに、千がゴミを引っ張り出して助けた川の神様が砂金を残していくと、手のひらを返して寄ってたかって集まる皆の態度を見て、カオナシは「砂金さえ渡せば皆が寄ってくる」と思うようになったのです。
そして、千に興味を抱いていたカオナシは、「湯屋」中に砂金をばら撒いて飲み込んだカエルの声で千を探し求めました。
「湯屋」の従業員は皆カオナシのばら撒く砂金に夢中になるなか、「欲しがれ」と言ったにも関わらず千一人だけが差し出した砂金に目もくれませんでした。
カオナシは、他の従業員が砂金を出せば自分の思い通りになったように、千もまた砂金さえ渡せば自分のものになると思っていたわけです。
こうしたことから見えてくるのは、カオナシの正体は「金をむさぼる欲望の現れ」と言えるのではないでしょうか。
カオナシが存在する意味は拝金主義の批判
カオナシの正体は「金をむさぼる欲望の現れ」とお伝えしましたが、そのカオナシはそれまで誰にも相手にされない寂しい存在でした。
まさしく名前のとおり顔(自分)が無いに等しい存在で、誰かに気づいてもらうために砂金をばらまいたわけですね。
しかし、カオナシが本当に求めたのは千ただ一人で、その千は砂金に目もくれず「私が欲しいものはあなたには絶対出せない」とカオナシの欲望を突き放したのです。
千が欲しいものは傷ついたハクが回復すること、言い換えるとハクとの愛情であり、金にものを言わせるカオナシには不可能だったわけです。
こうしたことから見えてくるのは、たとえ金にものを言わせて何でも手に入れようとしても、自分というものが無ければ(顔無し)愛情を手にすることはできないということではないでしょうか。
つまり、カオナシが存在する意味は、千とハクが愛情で結ばれたことに対比する拝金主義の批判の意味が込められていると考えられますね。
『千と千尋の神隠し』カオナシの登場シーンやセリフまとめ
それでは『千と千尋の神隠し』の物語のなかでも重要な意味があるカオナシの登場シーンや数少ないセリフについて、順を追ってご紹介しましょう。
カオナシが初めて登場したシーン
17:53頃
カオナシが初めて登場したのは、千が違う世界に迷い込んでしまった時に、ハクに助けられて一緒に油屋に入ろうと橋を渡っている時でした。
この時は他の神様達に紛れていて千と接触することはありませんでしたが、どこか一人寂しくたたずんでいるようにも映っていますね。
油屋の食べ物を食い尽くした後にカオナシが吐くシーン
1:34:23頃
カオナシは金を出して油屋の従業員に食べ物をありったけ持ってこさせると、千を呼んでこいと命じます。
そして千と対面すると、食べ物を差し出して
これ食うか?うまいぞー
金を出そうか。千の他には出してやらないことにしたんだ。
こっちへおいで。千は何が欲しいんだ?言ってごらん。
しかし、千がその言葉を拒否すると
嫌だ 嫌だ・・・ 寂しい 寂しい・・・
千欲しい 千欲しい・・・
とうろたえながら、今度は金を差し出して
欲しがれ 取れ!取れ!
と千に近寄りますが、それでも千は拒否し、私を食べる代わりにこれを食べてと川の主からもらった団子をカオナシに食べさせるのでした。
すると、カオナシは食べたものを吐き出しながら、逃げる千を追いかけたのです。
部屋から飛び出した千を追いかけるカオナシに対し、湯婆婆は閃光弾を浴びせると、カオナシは吐きながらもさらに千を追いかけたのでした。
千を追いかけてカオナシが水面に落ちるシーン
1:36:48頃
吐いた後も千を追いかけてくるカオナシに対して、千はあのひとは油屋にいないほうがいいと、銭婆へところへ一緒に行こうと誘いました。
そして太い配管の上から飛び降りて、千のところへついてきたのでした。
千と一緒に電車に乗って銭婆のところへ向かうシーン
1:39:20頃
千を追いかけている間に、カオナシは飲み込んでいた油屋のカエルや従業員を吐き出し、もとの姿に戻っていました。
そんなカオナシに対し、千は一緒に行こうと釜爺からもらった切符を使って電車で銭婆のところへ向かうのでした。
カオナシがケーキを食べるーンがかわいい
1:45:45頃
足の生えた街灯の案内で千達が銭婆のところへたどり着くと、銭婆はケーキやお菓子を出して千達をもてなしてくれました。
その時、カオナシはケーキをきれいに切り分けて食べていたのですが、その仕草が油屋で暴れていた化け物のような姿とは打って変わって愛らしく、意外な一面に「かわいい」と思う人もけっこういるようです。
こうしてみると、カオナシは湯婆婆が経営する「油屋」という欲望の巣窟では、それに取り込まれるようにして化け物の姿になってしまいましたが、そこから離れると元の姿に戻っていることがわかりますね。
作品の中でカオナシの存在する意味が、こういったところの演出にも現れているように思えますね。
まとめ
- カオナシの正体は「金をむさぼる欲望の現れ」と考えられる。
- カオナシが存在する意味は拝金主義への批判と捉えることができる。
- 油屋にいる時とそうでない時のカオナシの姿や言動からも存在意義が感じられる。
当ブログでは『千と千尋の神隠し』にまつわる記事をいくつか掲載しています。
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