大人気漫画の「鬼滅の刃」で鬼殺隊の伝令係として隊員のパートナーである鎹烏(カスガイカラス)は、もしかしたら初代神武天皇のパートナーとも言える八咫烏(ヤタガラス)が元ネタなのかもしれません。
なぜそう言えるのか?初代神武天皇の「神武東征」と呼ばれる神話に登場する八咫烏(ヤタガラス)とのあらすじ・エピソードをご紹介しながら、その理由を解説しています。
※あくまでも筆者の個人的な考察です。
目次
初代神武天皇とはどんな人物か家系図や『古事記』の神話のあらすじから簡単に解説!
初代神武天皇の本名は神倭伊波礼毘古命:系図を簡単に解説
初代神武天皇の本名は「神倭伊波礼毘古命(カムヤマトイワレビコノミコト)といいます。
「神武天皇」というのは、崩御されたあとにその功績を称えて後世の人が付けた諡号(しごう)です。
それでは簡単に神武天皇の系図をご紹介します。
- 父・・・鵜草葺不合命(ウガヤフキアエズノミコト)
- 母・・・玉依姫(タマヨリヒメ)
- 兄・・・五瀬命(イツセノミコト)
- 先祖・・・天照大御神(アマテラスオオミカミ)
神武天皇の系図をたどると、行き着くのは伊勢神宮に祀られている日本の最高位の女神・天照大御神(アマテラスオオミカミ)です。
天照大御神は天上世界の高天原(たかまがはら)を治める神様ですが、孫の邇邇芸命(ニニギノミコト)の代で地上世界に降臨し、寿命のある人間になったとされています。
その邇邇芸命の子孫が、山の神や海の神の血をひく娘と結婚したことで、神武天皇は天上世界の神・海の神・山の神の血筋を引くサラブレッドとして誕生しました。
兄・五瀬命と旅立った「神武東征」の神話のあらすじを簡単に解説!
神武天皇は、もともと九州南部の高千穂宮というところに住んでいましたが、ある日「どこに行けばより平和に天下を治めることができるでしょうか。東へ向かいませんか?」と、兄の五瀬命に相談して共に東へと向かうことにします。
途中でいくつかの宮を構えたり、土着の民を仲間に引き入れながら大阪湾のあたりまでたどり着いたのです。
ところが、そこには長脛彦(ナガスネビコ)という土着の豪族が待ち構えており、神武天皇一行と激しい戦闘になってしまいました。
神武天皇たちは苦戦を強いられ、やむなくそこから退却して和歌山県の方へ迂回しながら進むことにします。
この長脛彦との戦闘で深手を負った兄の五瀬命は、この傷がもとで亡くなってしまいました。
兄の五瀬命を失いその後も困難が続きますが、先祖である天上世界の天照大御神のご加護などもあり、再び宿敵・長脛彦のもとへとたどり着きます。
そして今度は長脛彦を退け、ようやく目的としていた天下を治める地にたどり着いたのです。
これがいわゆる「神武東征」と呼ばれる神話で、最終的に神武天皇がたどり着き、初代天皇として即位したこの地が現在の奈良県橿原市にある畝傍山(うねびやま)の橿原神宮(かしはらじんぐう)です。
初代神武天皇と八咫烏(ヤタガラス)のエピソードを『古事記』の神話から簡単に解説!
それでは神武天皇の神話「神武東征」に登場する八咫烏(ヤタガラス)のエピソードを簡単に解説します。
迂回した和歌山県の熊野で困難にあう神武天皇を助ける天照大御神
神武天皇は大阪湾周辺で長脛彦という土着の豪族との戦闘に敗れ、「我々は日の神の子であるのに(西から進んで)日に向かって戦ったことが良くなかったのだ。今度は(東から進んで)日を背にして戦おう」と言い、和歌山県のほうから回り込んで進むことにします。
しかし、和歌山県の方から進軍している途中で、長脛彦との戦いで深手を負った兄の五瀬命は、その傷がもとで亡くなってしまいました。その為、五瀬命の墓は紀の国の竈山(かまやま)という所にあるのです。
兄の死を悲しみながらも神武天皇はさらに進み熊野まで来ると、そこには大きな熊が見えたり消えたりと、まるで幻でも見ているかのような錯覚に陥ってしまいます。
すると、神武天皇は急に体調を崩してしまい、そのまま倒れ込んでしまいました。それは同行していた兵士も同じで、全員倒れてしまったのです。
そこへ高倉下(たかくらじ)という人物がやって来て神武天皇のそばに刀を献上すると、たちまち神武天皇は目覚めて起き上がりました。
そしてその刀を高倉下から受け取ると、この元凶とみられる荒神はひとりでに死んでしまったのです。
不思議に思った神武天皇は、なぜこの刀を授けてくれたのか尋ねると、高倉下はことのいきさつを語りだしました。
夢の中に天照大御神と高御産巣日神(タカミムスヒノカミ)が現れて、建御雷神(タケミカヅチノカミ)を呼び寄せ「地上世界で自分の子孫が苦しんでいる。その地上世界を平定したお前が助けに行ってきなさい」と言いました。
すると建御雷神は「私が行かなくとも、地上世界を平定した刀を送ればよいでしょう。この刀は高倉下の蔵の屋根を開け、そこから降ろすことにしましょう」と言うと、今度は私に向かって「朝目覚めたら、お前がこの刀を神武天皇のもとへ届けなさい」と言ったのです。
そして朝起きて蔵にむかうと本当に刀があったので、私は仰せのままにこうして献上しに参ったのです。
このように、神武天皇の先祖である天照大御神が高倉下を介して困難に苦しむ神武天皇を助けたのでした。
なお、この刀は布都御魂(ふつのみたま)という名前で、奈良県の石上神宮に祀られています。
天上世界から舞い降りた八咫烏(ヤタガラス)が神武天皇を導く
すっかり回復した神武天皇はすぐに進もうとしますが、天から高御産巣日神が現れて「神武天皇よ、ここから先は荒ぶる神々が大勢いて危険だ。天から八咫烏を遣わすから、その八咫烏が導く方へと進みなさい」と忠告をしました。
すると、高御産巣日神が言ったとおり、天から八咫烏が現れて神武天皇を導くように羽ばたいて行きました。
神武天皇は教えに従って八咫烏の導く方へと進んでいくと、荒ぶる神に出会うどころか、神武天皇に協力したいと申し出る有力な豪族と出会うことができたのです。
こうして八咫烏の導きにより仲間を増やし勢力を拡大した神武天皇は、ついに宿敵の長脛彦を打ち破ることができたのでした。
鬼滅の刃の鎹烏(カスガイカラス)の元ネタが八咫烏(ヤタガラス)だと言える理由を解説!
鎹烏と八咫烏の存在や役割から元ネタだと言える理由を解説
ご紹介した神武天皇の「神武東征」でのエピソードからもわかるように、八咫烏は神武天皇を目的地まで導く役割を担う存在です。
そしてそれは、日本の神様の頂点に立つ天照大御神から子孫である神武天皇に授けた存在です。
「鬼滅の刃」の鎹烏は、鬼殺隊の隊員の伝令係であり、鬼のいると所へと導く役割も果たしていますね。
また、この鎹烏はお館様である産屋敷一族から「子どもたち」である鬼殺隊員に授けたものです。
このように、八咫烏も鎹烏も「親から子へ(先祖から子孫へ)授けた進むべき道を導く役割を担うカラス」という意味で、存在意義が共通していますね。
鎹烏の「鎹」の意味から元ネタだと言える解説
「鎹(かすがい)」とは、コの字型の釘のことで、木材と木材をつなぎとめる目的で使われます。
この釘としての用途から転じて、子供が夫婦の仲をつなぎとめるという意味の「子は鎹」という言葉もありますね。
つまり鎹烏は、鬼殺隊員どうしや産屋敷をつなぎとめるカラス、という意味があると言えます。
一方八咫烏は、天照大御神と神武天皇が天上世界の神と地上世界の人間という間柄をつなぎとめる、という意味があると解釈できます。
このように、八咫烏も鎹烏も「つなぎとめる」という意味において似た存在だと思えますよね。
竈門炭治郎の鎹烏の名前「天王寺松衛門(てんのうじまつえもん)」から解説
さて、「鬼滅の刃」の主人公・竈門炭治郎の鎹烏の名前は「天王寺松衛門(てんのうじまつえもん)」というそうです。
大阪に天王寺区という場所があり、地図を見ると大阪湾にも比較的近い場所です。
定かではありませんが、ここは神武天皇の宿敵・長脛彦がいた場所に近い場所と考えられます。
また、神武天皇の兄・五瀬命が長脛彦との戦いがもとで亡くなり、その御墓は和歌山県の竈山(かまやま)という場所にあります。
これらのことをつなぎ合わせると、兄・五瀬命の御墓のある「竈山」から、「天王寺で待つ(天王寺松)」長脛彦のもとへ向かう為に八咫烏が神武天皇を導いた、という見方もできます。
こうしてみると、竈門炭治郎の鎹烏の「天王寺松衛門」という名前は、神武天皇の八咫烏のエピソードを意識して名付けられたのではないかと思えます。
まさに「鎹」の意味の通り、「天王寺松衛門」は八咫烏と鎹烏を「つなぎとめる」名前ではないでしょうか。
鬼滅の刃の鎹烏の元ネタが八咫烏だと言える理由まとめ
- 八咫烏と鎹烏の存在や役割が共通している
- 「つなぎとめる」という「鎹」の意味が共通している
- 竈門炭治郎の鎹烏「天王寺松衛門」の名前が神武天皇の八咫烏のエピソードとつながりがある。
いかがでしたでしょうか。
こうしてみると、「鬼滅の刃」の鎹烏は「神武東征」の八咫烏を元ネタとしている、という意味がわかって頂けたのではないでしょうか。
実はこの鎹烏だけでなく、様々な場面で「鬼滅の刃」と日本の神話はつながっています。
一例を上げると、高倉下の夢に現れた建御雷神が、地上世界を平定した「国譲り」という神話の中でキジが登場するのですが、このキジも「鬼滅の刃」のとあるキャラクターの元ネタとみることができます。
さらに、そもそも「鬼滅の刃」という作品のタイトルは、もしかしたら日本の神話に登場する神様の名前が使われていたかもしれないのです。
これらのことは下記の記事で詳しく書いていますので、興味を持ってもらえたらぜひ読んでみて下さい。
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今回ご紹介した神武天皇の神話については、歴史書である『古事記』や『日本書紀』に書かれています。
歴史の教科書にもその名が掲載される『古事記』や『日本書紀』は難しそうと思われるかもしれませんが、漫画やわかりやすい現代語訳で解説した本もたくさんありますので、ぜひこちらから読んでみることをオススメします。
これらの神話を知っていると、こちらでご紹介したこと以外にも「鬼滅の刃」と日本神話のつながりを発見できるかもしれませんよ。
ちなみに、難しいと思われがちな『古事記』ですが、実はとても面白いエピソードが満載です。
まずは面白いエピソードから読んでみると、意外と日本の神様が愛らしく思えてくるはずです。
私の独自の視点で『古事記』の面白いエピソードをまとめていますので、これから日本の神話を知りたいなと思っている人はぜひ読んでみて下さい。
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ちなみに、当ブログでは他にもこうした『鬼滅の刃』と日本神話の関係についての記事をいくつか掲載しています。
あまり知られていない日本神話と照らし合わせると、一味違った楽しみ方ができると思うので、ぜひこちらも読んでみて下さい。
↓鬼滅の刃と日本神話との関係についてはコチラ↓